Netflixのドラマ『アドレッセンス』を観ました。
- fcsakai2
- Jul 24
- 4 min read
心を大きく揺さぶられる作品でした。観終わったあと、後味の悪さを感じながらも全4話をもう一度観なおしました。なぜ2回も続けて観ようと思ったのか、自分でも少し整理してみたかったので、ここで言葉にしてみます。
※以下、ネタバレを含みます。これから観る予定の方はご注意ください!!
<第1話>ある朝、突然、警察が家に強制捜査に入り、13歳の少年ジェイミーが同級生の女の子を殺害した容疑で逮捕されます。衝撃的な幕開けです。 家族は何が起こったのかわからないまま警察に同行し、父親は取り調べに付き添うことになります。父親は、まだあどけない息子を信じて必死に守ろうとしますが、防犯カメラの映像から、犯行がジェイミーによるものであることが明らかになります。
<第2話>逮捕された数日後、警察がジェイミーの通う学校に捜査に入ります。同じ学校の生徒による「殺人事件」がおきた事実に、生徒たちは不安や戸惑いを抱えていましたが、表面は何事もないかのように振る舞っていました。 そんな中、ある男子生徒の発言をきっかけに、SNS上で広がる「いじめ」や、差別と偏見に満ちた「価値観」が明るみに出ます。それは、女性を見下し、男性こそ優遇されるべきだという価値観、「男は強くなければいけない」「モテなければ価値がない」といった、男性性の呪縛でした。 ジェイミーも、その価値観に翻弄されていたことが少しずつ見えてきます。
<第3話>ジェイミーと心理療法士による鑑定のためのカウンセリングの場面です。幼くてまだかわいらしさすら残る13歳の少年がもつ、女性蔑視的な考えや価値観、攻撃性などが、緊迫したやり取りの中で浮かび上がります。SNSがいかに放埒に、「マノスフィア(オンライン上のミソジニー)」や「80対20の法則、インセル(8割の女性は2割の男性に惹かれる。つまり、男がモテないのは女性が悪い)」といった思想を無防備な子どもたちに刷り込んでいくか……。少しずつ明らかになるジェイミーの本心とその背景に、背筋が凍る思いがしました。
<第4話>裁判で判決が下りるのを待つジェイミーの家族の一日です。事件後、家族は近隣からの嫌がらせが続く中で、ジェイミーの事件について話題にすることを避けて過ごしていました。
ある日両親は、息子に初めてパソコンを与えたあと、息子がどんな世界とつながっているのか気になりつつも、深くは知ろうとしてこなかったことについて振り返ります。
「部屋でPCをしているなら安心だと思っていた」「友達もいたし、学校にもいやがらずにいっていたじゃないか…」…。「私たちはいい親になりたかった、でも息子が助けを求めているときに、ただ立っていただけだった…」「私たちはいい親のつもりだった…。でも…、息子は罪を犯した」…。「こうなる前に、もっとできることがあった。それを認めないと…」
これまで、ちゃんと息子と向き合ってこなかったのではないかという後悔と共に、加害者の家族としての現実を引き受けなければならない日々の中で、必死に平穏を取り戻そうとあがく父と母、そしてジェイミーの姉の姿が痛々しいほどに描かれます。そして、父親が、「もっと上手く息子と接するべきだった」「ジェイミー、ごめんな」と泣き崩れる場面でドラマは終わります。
私が一番心を動かされ、痛みを感じたのがこの第4話でした。私自身、もうとっくに成人した娘の今の行動に戸惑い、傷つき、「自分は娘とどう向き合ってきたのだろう」と振り返らざるを得ない日々を過ごしていた時期と重なったからです。 ジェイミーの両親が「何かできることがあったのではないか」と苦悩する姿が私自身の姿とだぶり、二人の会話はまるで「その問いを、これからもずっと考え続けなければならない」と迫ってくるようでした。
この作品は、加害者の両親を「虐待していた」「薬物に問題があった」などの“典型的な問題のある親”としては描いていません。あくまで“ごく普通”の親たちとして描いています。それが、かえってリアルで、胸に迫りました。ジェイミーの両親も、私自身も、特別な親ではなく、ただその日その日をなんとかやりくりしながら生きてきただけ。そのことを思うと、「他になにができただろう」「向き合うって、いったいどういうことなのだろう?」と、自分に問いかけずにはいられませんでした。
『アドレッセンス』は思春期の危うさを描いたドラマであると同時に、社会の問題を浮き彫りにしています。そして、私たちが大人として、親として、社会の一員として、「何を追い求めてきたのか」「何を見落としてきたのか」を問い直す機会を与えてくれる作品だと思います。(実はこの文章を書きながら、3回目を見てしまいました…)
*Netflix『Adolescence』(イギリス) ワンショットで撮影されていて迫力がある映像も話題のひとつ。イギリスでは国会で取り上げられるほどの話題になったらしい。
-qan-





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