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森村誠一「老いる意味-うつ、勇気、夢」(中公新書ラクレ)を読んで

毎朝、二階のベランダに出て軽い体操をすることが日課のミステリー作家。

晴れた日は、遠くの山並みまで見渡せ、気持ちいい。

そんな毎日の日課がある朝突然変わった、

前日までとは、まったく違い、朝がどんよりと濁っていた。

その朝から三年、作家は老人性うつに悩まされる。思うように文章が書けなくなる。物忘れが増える。そして、医者にすがるしかなくなった日々。

かえりみるに執筆、講演、テレビ、ラジオの出演と多忙な毎日だった。

うつの間、散歩など規則正しい生活を心がけ、失いそうになる言葉をチラシの裏にまでメモし続ける努力。そして周囲の支えで、再び、ベランダに出るとまぶしいくらいの陽射しに会い、新作を発表するに至る。

うつの最中に書いた、作家なら発表したくないだろう文章も、正直にそのまま読者に見せた森村氏。何がきっかけで入ってしまうのかわからないのが、うつなんだと思わせる。

そして、彼は最後に、こう結ぶ。

「人間老いれば、病気はするし、悩み苦しむ。老いれば、他人にも迷惑をかけることもある。他人に助けてもらわないといけないことだらけだ。それが老いというものなのである。けれども、何歳になっても夢は抱き続けられる。私は88歳になった今でもそう思うのである。ネバーギブアップ!」

私自身、思いがけない形で自分の老いを感じることも多くなった。そのたび、目を反らしたくなる。だが長く生きていれば、誰もが通る道。ヨタヨタと歩くにしても、十分にその一歩を味わいたい。                   (豆)






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