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「母と、五月みどりと、禿げちゃびん」

アルツハイマーの母が老人保健施設から帰ってきた。老人保健施設とは、介護を必要とする高齢者が家庭への復帰を目指すためにケアはもとより、リハビリなどもしてくれる施設である。そして、家庭への復帰が目標なので、90日しか居られない。ひと月、家庭で生活をして、また入所してリハビリをしてもらうということも出来る。母は二度目の帰宅。帰宅のたびに少しずつ症状は進んでいる。

前回は3割くらいこちらの世界でいてくれたが、今回は9割近くが母の世界で生きている。だから姉と私のことも 「ほとんど介護士さん・・時々、娘」 という感じ。


母の特徴は、歌が好きで、不安定になっても歌・・演歌・・を歌うと一緒に歌って、気分が変わることと、誰かが家にかってに入ってきているという空想なのか妄想なのか幻視なのか、とにかく人や影が見えるらしいということ。しょっちゅう、「ほら、誰かいるやろ。ちょっと見てみ。」と呼ばれる。

先日もリビングのガラスをみて

母 「ほら、そこに禿げちゃびんのおっさんいるやろ。ちょっと見て。」 (口が悪いです)

私 「えー。怖いこと言わんといてよ~。・・・違うやん、それ、寝っ転がってるじいちゃんが写ってるだけやよ。(爆笑)」

 

今回の歌のブームは五月みどりの「温泉芸者」と神楽坂はん子の「温泉ワルツ」。

着替えを嫌がるとき・・夜に外に出ようとするとき・・YouTubeで曲をかけると歌いながら踊りだす。

もちろん、ダメな時もあるけれど。 歌いながら私も楽しくなる。

この調子なら一緒に居られるかも? でもなにかあっても仕事は休めない・・体力はもつのか?・・

一緒にいたい気持ちと現実の問題と・・楽しいとしんどいをぐるぐる・・ぐるぐる・・・


YouTubeを開くと、芸者姿の五月みどりがトップにあがっている。

“ハァ、じゃぶじゃぶ、じゃあぶじゃぶ~ ♪”のフレーズを思い出しながら実家に戻る。


今日は、母が尿取りパッドを勧めてくれる。

母 「これ、すごく良いから、あんたも使いなさい。」

私 「そうなんや、すごく良いやね。うーん、まだ大丈夫やけど、必要になったらこれ使うわ。」


                                           (tam)



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