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「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)」について学んだこと 

 今年の5月、「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援法)」が衆議員本会議において全会一致で成立しました。どのような法律なのでしょうか?


11月20日、ウィメンズカウンセリング京都主催の

『女性支援の新法を学ぶ -「困難な問題を抱える女性」が必要な支援につながるために-』

というシンポジウム(オンライン)にFC堺のスタッフたちと参加しました。参加者は140人を超えており、この新法に対する関心の高さがうかがわれました。

 シンポジストは、法学者で性暴力禁止法ネットワーク共同代表の戒能民江さん、NPO法人ウイメンズハウスとちぎの中村明美さん、そしてウィメンズカウンセリング京都の竹之下雅代さんの3人でした。


はじめに新法成立の経緯、内容のポイント、2024年の施行に向けての課題を戒能さんから聞きました。約1時間のお話しの中で何度も「当事者中心の支援」という言葉を繰り返されていて、これまでは、売春防止法のもとでの女性支援事業ゆえの限界があるとはいえ、なかなか当事者のニーズに細かく応えることが難しかった現状をあらためて知ることができました。

 女性支援新法の目的のひとつは、売春防止法からの脱却です。女性が女性であるために直面する困難な問題を更生や保護の対象とするのではなく、女性の福祉の増進を図り、支援のための施作を推進することが目的とされました。

また、困難な問題を抱える女性の定義に、「性的な被害」が一番先にあげられていることは、とても重要な点だと思います。性暴力被害者に対する偏見がまだまだ強い中で、支援にたどり着かずに自費で医療やカウンセリングを受けたり、あるいは誰にも話せずに一人で抱えるしかなかった女性たちの人権が守られるための一歩になることを期待したいです。

基本理念には、当事者の意思が尊重されながら、最適な支援を受けられるようにすることにより、その福祉が増進されるよう多様な支援を包括的に提供する体制を整備する、とあります。困難に直面した女性が抱えている問題・その背景、そして心身の状況などに応じながら、心身の健康の回復のための援助と、自立して生活するための援助なども含まれることになりました。これまで処罰や保護、更生の対象であった女性の人権を守るという視点が盛り込まれたことはとても重要です。竹之下さんが話しておられた、「支援する・される」関係ではなく地続きの共通の問題として取り組み、力の行使にセンシティブでありたいとい願うフェミニストカウンセリングの実践に通じる法律でもあると思います。

また、関係機関および民間団体との協働により、早期から切れ目なく支援が実施されるようにすること、とされました。売春防止法のもとで支援の限界を感じつつ、また若年女性を守る法律が整わない中、地道に活動を続けてこられた民間団体の努力と声が反映されたのでしょう。このように当事者中心主義と民間団体との協働による支援が基本理念にはっきりと打ち出されたことは、女性の人権を守る社会を実現するにあたり、大いに期待できる点ではないでしょうか。


 シンポジストの一人、中村明美さんのお話しの中で特に心に残ったことを書き留めておきたいと思います。中村さんは長年の支援の経験と調査をもとに、環境や心の傷など女性たちが抱える困難に対してどう関われるのか、ということを具体的に示されました。困難を抱えている女性がなかなか相談機関や専門家のところまでたどり着けなかったり、たどり着いたとしても支援に必要な環境が相談機関に整っていないなどの現状があり、言葉でいうほど「当事者中心」の支援は簡単ではないことをご自身の経験を通して話してくださいました。そしてお話しの最後に、「困り具合をわかっているところが一つあればいい」という、当事者の方の言葉を紹介されました。そして困難な問題を抱えた人と横並びで悩み、たとえ実践力にならなくても「ワカル人」として目されたいという支援者としての中村さんの思いと、困難をわかってくれる人の存在を感じることで力づけられたご自身の経験も聴くことができました。私自身も「ワカル人」と目されるような存在になりたい、と強く感じました。


 シンポジウムを通して女性支援新法の成立について学び、2017年に100年ぶりに刑法が改正された時と同じような興奮を覚えました。まだまだ課題は多く、施行後も見直しや改定を重ねていくことになると思いますが、すべての女性が女性というだけで人権を侵害されない世の中になることを心から願います。 

qan



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